はじめに
近年、男性向けリラクゼーションサービスとして人気を博しているメンズエステ。
しかしながら、「メンズエステ店を店舗型で開業したい」と考える方にとって、風営法の壁は大きな障害となっています。
特に、風俗営業法の規制により、店舗型営業が事実上難しい現状があり、それに伴い多くの事業者が出張型へと移行する傾向にあります。
メンズエステとは?業態の特徴と風営法上の分類
メンズエステとは、主に男性を対象としたリラクゼーションサービスで、アロマオイルマッサージやリンパドレナージュなどを提供する業態です。
リラクゼーションを目的とした健全なサービスとして認識される一方で、密着度の高い施術内容やセクシーな衣装、カーテンや個室によるプライベート空間の演出がある場合には、法的には単なるリラクゼーションではなく、風俗営業に該当する可能性があります。
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)では、メンズエステの営業内容や形態に応じて、以下のような分類がなされることがあります。
- 一般リラクゼーション業(法規制外):性的サービスを提供せず、健全なマッサージ業として営業
- 無店舗型性風俗特殊営業(デリバリーヘルス型):拠点を持ちつつ出張先(ホテル・自宅等)で施術を提供
- 店舗型性風俗特殊営業:実店舗を構え、性的サービスを含む内容を提供(ソープランド・ファッションヘルス等)
特に、性的サービスを連想させる内容や、密室・個室での接客がある場合、風営法第2条の定義に該当する恐れがあり、営業許可の取得や届出が必要となるケースもあります。
メンズエステを適法に運営するには、風営法の正確な理解とコンプライアンスが不可欠であり、違反があれば行政処分や摘発のリスクもあるため、慎重な対応が求められます。
マンションでメンズエステを開業できない理由
メンズエステをマンションで合法的に開業することは、現在の日本の法制度と行政運用の下では極めて困難です。
その主な理由は、風営法による立地規制や営業許可の制限にあります。
(1)風営法第2条・第3条の適用と立地規制
メンズエステの施術内容が性的サービスと見なされる場合、「店舗型性風俗特殊営業」(風営法第2条第6項)に該当し、公安委員会の許可が必要です。
しかしこの許可を取得するためには↓
- 学校・病院・児童施設から一定距離を保つこと(制限地域の外)
- 都道府県の条例により営業禁止区域外であること
- 警察署への詳細な書類提出と厳格な審査に合格すること
という厳格な要件をすべて満たす必要があります。
ところが、主要都市では条例により店舗型性風俗営業ができる地域がほとんど存在していないため、事実上「新規許可の取得は不可能」な状況です。
(2)個室施術のリスクと摘発対象
メンズエステの多くが採用する個室・密室での施術スタイルは、接待行為や性的サービスと疑われやすく、風営法違反として摘発されるリスクをはらんでいます。
たとえ性的サービスを提供していない場合でも、衣装・密着度・プライベート空間の演出が疑念を招き、違法営業と判断されることがあるため、非常に危険です。
このような背景から、メンズエステを店舗型で新規開業することは現実的に不可能といえます。風営法に基づき合法的に運営を目指すのであれば、出張型(無店舗型)への業態選択が現実的な代替手段となっています。
出張型(無店舗型)への移行が進む理由とは?
現在、メンズエステ業界では店舗型での新規開業がほぼ不可能な状況にあるため、出張型(無店舗型)メンズエステへと移行する事業者が急増しています。
その背景には、風営法による厳格な規制と、警察による摘発の強化があります。以下に、出張型が選ばれる主な理由を解説します。
(1)実質不可能な店舗型性風俗の許可取得
風営法により、店舗型性風俗特殊営業の新規許可を取得するには、学校・病院・児童施設から一定距離を確保した営業可能地域に限られるうえ、都道府県の条例で営業可能区域が極端に制限されているため、都心部ではほとんど許可を取得できません。現実的に、店舗型でのメンズエステ営業は不可能に近いといえます。
(2)警察による風営法違反の摘発が急増中
近年、違法営業のメンズエステ店に対する警察の摘発が全国で増加しています。性的サービスの提供の有無に関わらず、個室での密着施術や衣装の過激さが問題視され、違法営業と判断されるケースも多発。特に無許可で営業していた場合、営業停止や刑事処分に発展することもあります。
(3)無店舗型性風俗として合法営業が可能
こうしたリスクを回避するため、出張型では「無店舗型性風俗特殊営業」として公安委員会に届け出ることで、合法的な営業許可が取得可能です。事務所を構える場所に立地制限がほとんどないため、通常のマンションやオフィスでも要件を満たせば申請できます。
(4)低コストで開業可能
実店舗を必要とせず、内装工事も不要なため、初期費用を抑えてスモールスタートできる点も魅力です。法令を遵守しつつ、安全に営業したい事業者にとって、出張型は現実的でリスクの少ない選択肢といえるでしょう。
違法営業のリスクと法令遵守の重要性
メンズエステ業界では、無許可のまま実質的に風俗営業を行っている店舗型サロンが少なくないのが実情です。こうした違法営業は、警察の摘発対象となるだけでなく、刑事罰・営業停止・風評被害など、重大なリスクを伴います。
正しく届け出を行わずに営業を始めることは、極めて危険な行為です。
(1)摘発事例の急増と警察の監視強化
特に東京都・大阪府などの都市部では、無許可営業のメンズエステ店に対する摘発が年々増加しており、警察による抜き打ちの立ち入り調査が頻繁に行われています。
性的サービスの有無に関係なく、個室・密室での施術や過度な密着、セクシーな衣装などが問題視され、風営法違反と判断されるケースも多発しています。さらに、ホームページや求人広告の表現が曖昧であることから違反と見なされる例もあり、法令に抵触するリスクは予想以上に高いのが現実です。
(2)届出・運営管理は風営法の専門家に依頼を
出張型で合法的に営業を行うには、「無店舗型性風俗特殊営業」としての公安委員会への正確な届出が必須です。
さらに、利用者確認(年齢確認)や従業者名簿の作成・保存義務、身分証の提示・記録など、法令で定められた運営管理が求められます。これらの業務は煩雑でミスが許されないため、風営法に精通した行政書士などの専門家に相談することで、スムーズかつ安全に手続きを進めることが可能です。
違法営業を回避し、長期的かつ安定的にメンズエステを運営するには、法令遵守を徹底し、行政のルールに則った正しい手続きが不可欠です。
開業前からプロのサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えた健全な経営が実現します。
まとめ
メンズエステの開業を検討するにあたり、店舗型での営業は風営法の厳しい規制により、現在では新規許可の取得がほぼ不可能となっています。
そのため、近年では多くの事業者が無店舗型(出張型)メンズエステへと移行しており、合法的に営業を継続する手段として注目されています。
適法に営業を行うには、「無店舗型性風俗特殊営業」の届出や従業者台帳の作成など、風営法に基づいた厳格な手続きと運営管理が不可欠です。