風営法許可

風営法と行政処分|営業停止になる本当の理由を行政書士が暴露

はじめに

「ある日突然、警察からの立入調査が入り、そのまま営業停止に…」

「風営法の許可はきちんと取っていたのに、なぜ処分を受けたのか分からない」

――そうした声は、ナイトビジネスの現場で少なくありません。

キャバクラ、スナック、ガールズバーなど風営法の規制対象となる業種において、行政処分は経営そのものを揺るがす深刻なリスクです。

行政処分には、営業停止命令・許可の取消・是正指導などがあり、違反の程度や継続性によっては重い処分が科されることも。

しかもその多くは、悪質な無許可営業ではなく、「気づかぬうちの違反」や「軽い認識違い」によって発生しています。

野口 優夜
野口 優夜
本記事では、風営法に特化した行政書士の視点から、営業停止や許可取消につながる典型的な原因・事例・見落としやすいポイントを解説し、どのようにリスクを回避すべきかを具体的にお伝えします。店舗運営を安心・安全に継続するための実務知識として、ぜひ最後までお読みください。

風営法における行政処分とは?

風営法における「行政処分」とは、都道府県公安委員会(実務的には所轄の警察署生活安全課)が、風俗営業や深夜酒類提供飲食店営業などに対して行う、法令違反や不適正な営業を是正するための法的措置のことを指します。

この処分は、違反の内容や悪質性、違反期間、改善の有無などを総合的に判断したうえで下され、内容は軽微なものから営業の根幹を揺るがす重大処分まで多岐にわたります。主な処分内容は以下の通りです。

営業停止命令(○日間の営業禁止)

特定の違反が認められた場合、その内容と程度に応じて数日から数十日間、営業を停止させる行政命令です。

経済的損失に加え、スタッフや顧客の離脱にもつながりやすく、極めて影響の大きい処分です。

営業許可の取消し

名義貸しや重大な違反の繰り返しがあった場合、公安委員会は営業許可そのものを取り消すことができます。

取消処分を受けた者は、その後一定期間、再度の許可申請ができなくなるなど大きな不利益があります。

改善命令(是正指導)

現時点では営業を継続させつつ、問題点を改善するよう行政指導を行う措置です。

期限内に是正が行われない場合は、営業停止命令などに移行する可能性があります。

これらの行政処分は、単なる指導にとどまらず、事業の継続可否に直結するほどの影響力を持つ場合もあります。

実は多い!よくある処分理由5選

風営法に基づく行政処分というと、「悪質な無許可営業」や「闇営業」といった極端なケースが思い浮かびがちですが、実際の処分理由はそれだけではありません。

① 接待行為の違反(無届のガールズバー等)

「うちは接待していないつもりだった」というケースでも、女性スタッフが客の隣に座って会話を継続したり、お酌をする、カラオケでデュエットをするなどの行為が確認されると、それだけで「接待行為」と判断されます。風俗営業許可なしでこれを行えば即違反となり、営業停止や是正命令の対象になります。

② 従業員名簿の未備え・虚偽記載

風営法第21条では、すべての従業員(アルバイトを含む)について、氏名・生年月日・住所などを記載した「従業員名簿」の備付けが義務付けられています。

また、これに虚偽があったり、記載漏れがあった場合も違反と見なされ、是正指導や営業停止に繋がるリスクがあります。

忙しい時期に未登録のアルバイトを雇う行為も処分対象になることがあるため注意が必要です。

③ 営業時間違反(深夜0時を超えて営業)

風俗営業1号(キャバクラや接待スナックなど)は原則として深夜0時までの営業が上限とされています。

これを超えて営業していた場合、たとえ“常連さんだけ”でも厳密には法令違反。

警察の立入調査で確認されれば、営業停止処分が下される可能性があります。

1回の違反でも指導対象になるため、閉店作業の時間管理も重要です。

④ 店舗構造の違反(見通し遮断、照度不足など)

風営法では「客室の見通しが確保されていること」「一定の照度を確保していること」など構造的要件が定められています。

カーテンやパーテーション、ブース状の仕切りによって視界が遮られていたり、照明が暗すぎる場合は違反と判断されます。内装変更後に届出を怠っているケースも多く見られます。

⑤ 許可内容との乖離(名義貸し・実質的経営者の違い)

営業許可を取ったのが表向きの経営者で、実際の経営判断や運営を別の人物が行っていた場合、それは「名義貸し」と見なされます。

特に、風営法では名義貸しは重大違反とされており、即営業許可取消しに至る可能性があります。

また、売却・譲渡・実質的な経営移転などがあった場合には、事前に適切な手続きが必要です。

大阪市の摘発傾向と実例

大阪市における風営法違反の取り締まりは年々厳格化しており、特に繁華街であるミナミ(心斎橋・なんば)エリアや北新地では、風俗営業や深夜酒類提供飲食店への立入調査が頻繁に実施されています。

大阪府警の生活安全課は、定期的な無予告調査に加え、近隣住民からの苦情や通報を端緒とする重点的な監視を強化しています。

以下は実際に大阪市内で確認された摘発事例です。

  • 某ガールズバー(ミナミ):形式上はバー営業として届出をしていたが、実態としてスタッフが接客・お酌・カラオケの相手をしていたため、接待行為と判断され30日間の営業停止処分。
  • 某スナック(北区):営業中の照度が基準を下回っており、さらにパーテーションで客席を仕切っていたため「見通し確保義務違反」と判断。是正指導後も改善されず、営業停止命令を受ける。
  • 名義貸し(中央区):申請者とは別の実質的経営者が運営していたことが発覚。営業許可は取り消され、関係者が事情聴取を受けた。

このように、大阪市では小さな違反も見逃されず、「知らなかった」では済まされないのが現実です。

店舗運営においては、常に法令遵守を意識し、リスク回避策を講じる必要があります。

よくある誤解と落とし穴

風営法に基づく行政処分を受けた事業者の多くは、「うちは接待していないつもりだった」「届出はしていた」「まさか本当に調査が来るとは思わなかった」といった言葉を口にします。しかし、こうした“思い込み”や“曖昧な理解”こそが、処分に直結する落とし穴です。

「接待じゃないと思っていた」

接待かどうかは事業者の主観ではなく、客観的な営業実態と警察の判断に基づきます。

たとえカウンター越しであっても、女性スタッフが継続的に会話・お酌・カラオケの相手をしていれば、接待と判断され、風俗営業の無許可営業に該当する可能性があります。

「届出してるからセーフ」

深夜酒類提供飲食店営業の届出だけでは、接待行為を行うことはできません。

接待がある場合は、風俗営業の「許可」が必要であり、これを怠ると営業停止や許可取消の対象になります。

「立入調査は予告される」

実際には、立入調査は原則“抜き打ち”で行われるのが通例です。

特に苦情や通報がある店舗では、事前通知なしで警察官が店舗を訪れ、照度・構造・接待行為の有無を確認されるケースが増えています。

これらの誤解を避けるには、現場の実態に即した判断と、専門家によるアドバイスの活用が欠かせません。

行政書士の視点から:処分を避けるための実務ポイント

風営法の許可を得たからといって、放置しておけば処分のリスクは高まる一方です。以下のような対策が有効です。

  • 接待行為の線引きを従業員に徹底教育
  • 従業員名簿の整備と毎月の更新
  • 構造図面と現状の一致確認(改装後に要注意)
  • 営業時間の厳守(特に深夜帯)
  • 定期的な行政書士とのチェック体制の構築

まとめ:行政処分は「突然」ではなく「必然」

風営法における営業停止や許可取消といった行政処分は、「ある日突然」降ってくるように感じられるかもしれません。しかし、実際の現場では、その多くが日頃の小さな違反の積み重ねや、制度への理解不足、改善努力の不足によって引き起こされています。

風俗営業許可を取得した後も、それで安心してしまうのではなく、継続的な法令遵守の意識と社内管理体制の構築が不可欠です。例えば、接待行為の判断基準、従業員名簿の更新、営業時間の厳守、内装構造の変更申請漏れなど、実務上の管理ポイントは多岐にわたります。

野口 優夜
野口 優夜
「知らなかった」「他の店もやっていた」は言い訳にならず、行政は実態を見て厳格に処分を下します。だからこそ、現場の運営と法令の“すき間”を熟知した行政書士が伴走することは、事業者にとって最大のリスクヘッジとなります。