はじめに
近年、副業や在宅ワークとして注目を集めている「ライブチャット」や「アダルト配信サービス」。
Fantia(ファンティア)やmyFans(マイファンズ)といったプラットフォームを活用し、個人でも収益を得られる時代となりました。
しかし、これらのサービスを運営・出演するにあたっては、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、いわゆる「風営法」に基づく届出が必要な場合があります。
特に「映像送信型性風俗特殊営業」に該当する場合、無届での運営は処罰の対象となることも。
映像送信型性風俗特殊営業とは?
「映像送信型性風俗特殊営業」とは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第2条第6項第5号に定められた営業形態です。
法律上は、
「映像送信により人の性的好奇心に応じてその相手方に接する役務を提供する営業」
と定義されています。
この規定は、2020年の風営法改正により新設されたもので、インターネットを介して性的サービスを提供するライブチャットやアダルト配信サービスの急増を受け、法規制の対象を拡張する目的で制定されました。
映像送信型性風俗特殊営業に該当するのは、主に出演者がリアルタイムで視聴者と映像越しに性的パフォーマンスを行うサービスです。ユーザーの性的好奇心に応じて、その場でリクエストに対応したり、個別にやり取りを行う機能がある場合、ほぼ確実に風営法の規制対象となります。
対象となる具体的な配信サービス例
以下のような人気アダルトライブチャットサイトは、いずれも映像送信型性風俗特殊営業に該当する代表的なサービスです。
- Fantia(ファンティア)
- myFans(マイファンズ)
- FANZAライブチャット(旧DMMライブチャット)
- マダムライブ
- ライブでゴーゴー(ライブでGOGO)
- エンジェルライブ
これらのサイトでは、個人・法人問わず出演者がユーザーに対してリアルタイムで性的な行為や会話を行う形式が一般的であり、届出を行わずに運営・出演することは違法となります。
映像送信型性風俗特殊営業の届出は必要か?|無店舗型性風俗との違い
映像送信型性風俗特殊営業は、風営法上「無店舗型性風俗特殊営業」に分類されます。
これは「デリヘル(出張型風俗)」や「派遣型ファッションヘルス」などと同じカテゴリですが、営業形態に明確な違いがあります。
- 無店舗型性風俗: 利用者のもとへスタッフが出向いて性的サービスを提供する(例:デリヘル)
- 映像送信型性風俗: インターネット上でライブチャット等を通じ、性的サービスを映像で提供する(例:Fantia,myFans)
このように、対面で接触するか、映像を通じて接するかで営業形態が分かれますが、どちらも営業開始前に警察署への届出が必須です。
風営法に基づき、届出を怠ると重い罰則の対象となるため、注意が必要です。
映像送信型性風俗特殊営業の届出手続きの流れ
1.営業所(運営拠点)の確保
営業所は、法人登記上の本店とは異なり、実際の機材管理や出演者との連絡などを行う拠点が対象です。
2.必要書類の準備
- 映像送信型性風俗特殊営業開始届出書(所定様式)
- 住民票(個人)または登記簿謄本(法人)
- 営業概要書(サービス内容・配信方法などを明記)
- 誓約書(法令遵守、未成年排除など)
- 賃貸借契約書(事務所使用権限の証明)
- 営業所の案内図・見取り図
- 従業員名簿、チャットレディやスタッフの本人確認書類コピー
3.警察署へ届出書類を提出
営業所所在地を管轄する警察署(生活安全課)にすべての書類を提出します。
書類に不備がなければ、おおむね10日程度で届出番号が発行され、合法的に営業を開始できます。
※地域ごとに提出書類や審査の詳細が異なるため、事前に警察署または風営法専門の行政書士に確認することが推奨されます。
届出をしなかった場合の罰則
映像送信型性風俗特殊営業を無届で行った場合、風営法第39条により以下の罰則が適用されます。
刑事罰
- 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
- またはその併科
さらに、法人が違反した場合、法人と役員が併せて処罰されることがあります。
重大なリスク
- 警察による営業所の立入検査・押収
- プラットフォーム(例:Fantia,myFans)との契約解除
- Google広告やSNS広告アカウントの永久停止
- 将来的な再開業の困難(前科記録が風営法関連で残るため)
無届営業は警察の摘発対象となりやすく、事実上の廃業リスクを伴います。
「とりあえず始めて、バレたら対応する」という考えは非常に危険です。
映像送信型性風俗特殊営業のよくある誤解
Q1:個人のチャットレディが自宅で配信する場合も届出が必要?
A:原則として、業として反復継続して行う場合は届出が必要です。個人チャットレディが自宅で活動し、報酬を得ていれば「業」と判断される可能性があり、無届営業とされるリスクがあります。
ただし、自宅を営業所として届出するには賃貸人の使用承諾が必要なため、実務的には難しい場合が多いです。そのため、多くの事業者は出演者を管理する「事務所」を別途確保して届出を行っています。
Q2:映像の内容が「性的」ではない場合は届出不要?
A:内容が性的なものでなければ風営法の規制対象外となる可能性がありますが、判断基準は極めて曖昧です。
- 「肌の露出が多い」「誘惑的な仕草」
- 「性的なチャット内容への応答」
などが含まれると、警察は風営法該当と判断することがあります。慎重な判断が必要です。
映像送信型性風俗特殊営業を適法に運営するポイント
1.出演者の年齢確認と記録保存
出演者が18歳以上であることを公的証明書で確認し、記録を保存する義務があります。違反した場合は児童福祉法・児童ポルノ禁止法にも抵触する可能性があります。
2.映像データの保存義務
警察の要請に応じて提示できるよう、一定期間映像を保存しておく義務があります(例:30日〜90日間など、都道府県により異なる)。
3.個人情報管理体制の構築
チャットレディやユーザーの個人情報管理は、個人情報保護法に基づき適正に行う必要があります。プライバシーポリシーの整備やセキュリティ対策も必須です。
行政書士による届出サポートのメリット
映像送信型性風俗特殊営業の届出は、書類の数が多く、記載ミスや不備があると受理されません。風営法専門の行政書士に依頼することで、以下のメリットがあります。
- 書類の作成・図面作成の代行
- 警察との事前相談代行
- 営業開始後の運営マニュアル整備支援
特に、初めて開業する方や法人設立を伴う場合は専門家の関与が不可欠です。
まとめ|映像送信型性風俗特殊営業は正しい手続きが命
「ライブチャット運営はネット上だけだから風営法とは関係ない」と考えていると、大きなリスクを抱えることになります。
風営法では、オンラインサービスであっても性的サービスを提供する業態を厳しく規制しており、無届営業は重い罰則の対象です。
映像送信型性風俗特殊営業を始めるには、
- 営業所の確保と用途地域の確認
- 警察署への届出手続き
- 出演者の管理体制の構築
が欠かせません。