はじめに
近年、大阪市では「コンカフェ(コンセプトカフェ)」の新規開業が急増しています。
メイドカフェや執事カフェ、アニメ・戦国・ホラーなど多彩なテーマを取り入れたコンカフェは、非日常的な体験が楽しめる飲食店として若年層を中心に高い人気を誇っています。
しかし、その一方で「風営法」の知識が不十分なまま開業し、無許可営業による摘発や行政指導を受けるケースも後を絶ちません。
とくに大阪市は都市部で規制も厳しく、店舗の立地や接客スタイルによっては風俗営業許可の取得が必要となる場合があります。「ただの飲食店」だからと油断してしまうと、営業停止や罰則といった重大なリスクを招く可能性があるのです。
コンカフェとは?
コンカフェ(コンセプトカフェ)とは、特定のテーマや世界観に基づいた衣装や接客スタイルで来店客に非日常的な体験を提供する新しい形の飲食店です。
大阪市を中心に人気を集めており、代表的なスタイルにはメイドカフェや執事カフェ、アニメ風衣装を着用したキャストによる接客、バニー系のコンカフェなどがあります。
店内では、キャストがカウンター越しに接客するスタイルが一般的ですが、会話を中心とした接待的なコミュニケーションや、客の隣に座る行為、照明を落としたクラブ風の演出がなされることもあります。
これらの接客形態が一定の基準を超えると、風俗営業法(風営法)上の「接待行為」と判断される可能性があり、風俗営業許可が必要になるケースも多く見受けられます。
コンカフェと風営法の関係
大阪でコンカフェを開業する場合は、こうした点を踏まえた上で風営法に基づく適切な許可・届出の有無を判断することが重要です。
無許可営業は重大な法的リスクを伴うため、開業前に必ず法令を確認しましょう。
コンカフェ(コンセプトカフェ)を開業・運営するうえで、必ず理解しておくべき法律が「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」です。
風営法では、「接待行為」を伴う飲食店は「風俗営業第1号営業(いわゆるキャバクラ営業)」に該当し、営業には公安委員会の許可が必要とされています。
ここでいう「接待行為」とは、たとえば以下のような接客スタイルを指します。
- 客の隣に座ってドリンクを提供する
- 長時間にわたり会話を続ける
- 写真撮影、肩に触れるなどの要望に応じる
コンカフェがこのような行為を行っている場合、「カフェ」や「飲食店」と名乗っていても実態が接待行為に該当すれば、風俗営業としての許可が必要です。
大阪市内ではこの判断が特に厳格であり、無許可での営業が摘発されるケースも相次いでいます。風営法違反で摘発されると、罰金や営業停止などの重い処分を受ける可能性があるため、開業前に必ず営業形態と法的要件の確認を行うことが不可欠です。
大阪市での開業の流れ
大阪市でコンカフェを開業する場合、以下の手続きが必要です。
営業内容により「飲食店営業許可」だけで済む場合と、
「風俗営業許可」が必要な場合に分かれます。
ステップ1:営業形態の明確化
まずは自店舗の営業スタイルを明確にします。以下のポイントを整理しましょう。
- 客席とキャストの位置関係(カウンター越しか、隣に座るのか)
- 会話の時間や内容(営業トークか、簡易な注文対応のみか)
- 衣装の露出度や演出内容
- 提供するドリンクの種類(アルコールの有無)
この段階で、風俗営業に該当するかどうかを行政書士に相談するのが安全です。
ステップ2:物件選定と用途地域の確認
風俗営業を行う場合、大阪市の都市計画に基づく「用途地域」の制限を受けます。風俗営業は以下の用途地域でしか許可されません。
- 商業地域
- 近隣商業地域(一部制限あり)
また、学校や病院、児童福祉施設などから一定距離(おおむね100m〜200m)以内では営業できません(制限条例)。不適格な物件を選ぶと、後から営業が不可能になることもあるため、契約前に調査することが必須です。
ステップ3:内装の設計と施工
風俗営業許可を取得するには、店舗の構造にも要件があります。
- 高さ1mを超える見通しが妨げられる構造物がないこと
- 出入口が見通せる構造
- 営業所の面積・照度・防音構造など
これらに適合しない内装では許可が下りないため、設計段階で専門家と相談する必要があります。
ステップ4:各種許認可の取得
【飲食店営業許可】
所轄の保健所へ申請し、食品衛生責任者の設置が義務付けられます。
【風俗営業許可】(必要な場合)
大阪府公安委員会に申請。図面、住民票、誓約書、用途地域証明など多数の添付書類が必要で、行政書士による代行が一般的です。審査には通常1〜2か月かかります。
摘発されたコンカフェの事例
大阪市内では近年、風営法に違反したコンカフェが相次いで摘発されており、行政や警察の監視体制が強化されています。
とくに「飲食店営業」と称しながら実質的に接待行為を行っていたケースや、SNSを利用した集客が違法と判断されたケースなど、形式ではなく“実態”が厳しく問われる状況となっています。以下に、実際に摘発・指導を受けた2つの事例を紹介します。
事例①:大阪市北区|無許可営業で風営法違反により摘発
大阪市北区の繁華街にあるメイドカフェ風のコンカフェでは、キャストが客の隣に座り、アルコールを伴うドリンクを提供する接待行為を行っていたにもかかわらず、風俗営業許可を取得していませんでした。店舗側は「カフェとして営業しており、接待には該当しない」と弁明しましたが、警察は店内の実態を調査し、「風営法違反(無許可営業)」として店長とオーナーを逮捕しました。
→ 重要なのは“業態の呼称”ではなく、実際の営業実態です。
たとえ「カフェ」と称していても、接待行為が確認されれば風営法違反に問われます。
事例②:大阪市中央区|SNSでの“客引き行為”が違法と判断
大阪市中央区のあるコンカフェでは、X(旧Twitter)やInstagramで「○○ちゃんが今日も待ってます!」「一緒にチェキ撮ろう♡」といった投稿を日常的に行っていました。
これが来店を直接誘導する“呼び込み行為”と見なされ、風営法上の“客引き行為の禁止”に違反するとして、所轄警察署から是正指導を受けた事例です。
→ SNSやインターネット上での集客活動も、内容によっては風営法違反と判断されるリスクがあるため、表現には細心の注意が必要です。
これらの事例は、大阪市でコンカフェを開業・運営する際に風営法への対応がいかに重要かを示しています。
形式的な「カフェ営業」という看板に頼るのではなく、実態に即した許可取得と法令順守が不可欠です。
行政書士の視点:コンカフェ開業の3つの鉄則
風営法専門の行政書士として、これからコンカフェを開業される方にお伝えしたい重要ポイントは以下の3つです。
「カフェ」と名乗ることは免罪符にならない
「カフェ形式だから大丈夫」「キャバクラではないから届け出不要」といった認識は非常に危険です。営業実態が“接待的”であれば風営法適用対象となるため、名称に惑わされず、専門家の判断を仰ぐことが重要です。
初期段階からの法的チェックがコストを下げる
物件選定や内装設計の段階で行政書士や建築士に相談しておくことで、後からの手直し・違法状態の是正にかかるコストやリスクを大幅に減らすことが可能です。
SNS・イベント運用にもルールがある
コンカフェではSNSでの告知や特典イベントが重要ですが、その運用が風営法違反となるケースもあります。
チェキ販売や個別チャット機能、ポイント制度などについても、事前にリーガルチェックを受けることがリスク回避につながります。
まとめ
大阪市でのコンカフェ開業は、エンタメ性が高く注目度もある一方で、風営法・条例・建築基準など複数の法令に横断的に対応する必要がある分野です。特に「接待的行為」の定義が広く、摘発リスクが非常に高いため、自己判断は極めて危険です。