そもそもガールズバーとは?
ガールズバーとは、女性スタッフがカウンター越しにお酒を提供し、会話を楽しむスタイルの飲食店です。キャバクラのように隣に座る接待行為がなく、営業形態としては比較的シンプルに見えることから、ナイトビジネスの中でも開業のハードルが低いと思われがちです。
しかし、実際には深夜営業や酒類の提供を行うことから、営業内容によっては風俗営業法(風営法)の対象となる場合もあります。特に、接客スタイルが接待と判断されると、キャバクラと同様の1号許可が必要になるため注意が必要です。
開業に必要な行政手続き
ガールズバーを開業する際には、風営法だけでなく、保健所や警察署への各種手続きも必要になります。以下の3つのステップは、法律に沿った運営を行うために避けて通れない行政手続きです。
食品衛生責任者の選任
飲食店を開業するには、店舗ごとに「食品衛生責任者」を1名選任する必要があります。調理師や栄養士などの有資格者がいない場合でも、地域の保健所が実施する講習会を受講すれば資格を取得できます。
この責任者は、店舗内の衛生管理を担う非常に重要な存在です。
飲食店営業許可の取得
営業を始めるには、まず保健所の検査を受けて「飲食店営業許可証」を取得する必要があります。設備や厨房の配置、衛生状態などが基準を満たしているかを審査されます。
申請時には、店舗の平面図や賃貸契約書、食品衛生責任者の資格証明など複数の書類を提出する必要があり、不備があると許可が下りないので注意が必要です。
深夜酒類提供飲食店営業の届出
深夜0時以降も営業を続ける場合は、警察署(公安委員会)に「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出しなければなりません。
この届出には、営業の方法や照明・音響設備の構造に関する図面、営業所周辺の略図など、詳細な資料の添付が求められます。
届出が受理されなければ、深夜営業は違法となりますので、必ず余裕を持った準備を行いましょう。
キャバクラとみなされないための注意点
ガールズバーを開業・運営する上で、最も注意が必要なのが「キャバクラとみなされないこと」です。風営法では、接待を行う営業形態は風俗営業1号に該当し、専用の許可が必要とされています。
ガールズバーはカウンター越しの接客を前提としており、接待をしない業態として扱われるため、許可や届出の範囲を逸脱しないよう注意しなければなりません。
接待の有無
風営法における接待とは、「歓楽的雰囲気の中で特別にもてなす行為」を指します。たとえば次のような行為が接待と見なされる可能性があります:
- 隣に座って会話をする
- お酌をする
- お客様の口元へグラスを差し出す
- 手を握ったり体に触れたりする行為
このような行為があった場合、ガールズバーであってもキャバクラ営業と判断され、無許可営業として処分されるリスクがあります。
店舗構造と接客スタイル
風営法は構造面からも営業形態を判断します。カウンター越しの接客が原則のガールズバーですが、ボックス席が多く設置されている、または個室があると「接待目的の構造」と見なされやすくなります。
さらに、実際の営業スタイルにおいて、カウンターがあってもスタッフが客の隣に座るような接客をしていれば、それは構造ではなく“実態”が優先され、風俗営業の対象になる可能性があります。
営業時間と許可の種類の違い
ガールズバーとキャバクラでは、取得するべき許可の種類と営業時間の上限が異なります。
- 深夜酒類提供飲食店:接待NG、深夜0時以降の営業OK
- 接待飲食等営業(風俗営業1号):接待OK、深夜営業NG
つまり、接待を行わない営業であれば深夜営業が可能ですが、接待を行いたい場合は風俗営業1号許可が必要となり、深夜0時以降の営業は認められません。
この「接待の有無」と「営業時間」の区分は明確に線引きされており、誤った判断は違法営業と見なされるリスクを伴います。
確認
ガールズバーとして営業を継続していくには、「届出の内容」「店舗構造」「営業の実態」がすべて一致していることが必要です。
少しでも不一致があれば、警察による指導や摘発の対象になる可能性がありますので、開業前に必ず専門家に相談し、法的な観点から整合性を確認しておくことが大切です。
違法営業とされる主なケース
ガールズバーを開業・運営する際には、法令を正しく理解し、遵守することが大前提です。以下は、実際に違法営業とされやすい代表的なケースです。
これらに該当すると、行政処分や刑事罰の対象になる可能性があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
18歳未満の深夜勤務
18歳未満のスタッフを午後10時以降に働かせることは、風営法および労働基準法に違反します。仮に飲食店として営業していても、夜間勤務に関する規制は厳格であり、違反すると懲役や罰金の対象となります。
無許可での接待
カウンター越しの接客が基本のガールズバーにおいて、隣に座る・お酌をする・体に触れるなどの「接待行為」を行った場合、風俗営業1号の許可が必要です。
これを取得せずに営業を続けると、無許可営業となり、2年以下の懲役または200万円以下の罰金などの厳しい処分を受ける可能性があります。
無届での深夜営業
深夜0時以降の営業を行うには、「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を警察署に提出する必要があります。
届出をせずに深夜営業を行うと、風営法違反により最大50万円の罰金が科されることがあります。
営業禁止区域での営業
ガールズバーは、地域の都市計画(用途地域)により営業が制限されています。第一種・第二種住居地域などでは、たとえ届出をしていても営業自体が認められていないため、契約前にエリアの確認が不可欠です。
20歳未満への酒類提供
未成年者と知りながらアルコールを提供した場合、未成年者飲酒禁止法違反として罰金が科されるほか、営業停止処分の可能性もあります。
スタッフが年齢確認を怠るケースも多いため、厳格な対応が必要です。
就労資格のない外国人の雇用
外国人スタッフを雇用する際には、必ず在留カードを確認し、就労可能な資格があるかを見極める必要があります。
資格がない場合に雇用すると、不法就労助長罪に該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
不法就労助長罪により、経営者が3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科される場合があります。
行政書士ができることと開業支援
ガールズバーの開業において、最大の落とし穴は「知らなかった」が招く違法営業です。営業スタイルや店内構造、営業時間、スタッフの雇用形態など、ひとつでも法令に適合していない点があれば、営業停止や罰則のリスクがあります。
そのため、開業時には法律の専門家である行政書士に相談することが極めて重要です。
行政書士に依頼することで得られる最大のメリットは、法令との“ズレ”を未然に防げる点です。許可・届出の要否を事前に診断し、風営法・食品衛生法・建築基準法など複数の法令を横断的にチェック。
必要な図面や申請書類もすべて正確に整え、所轄の警察署や保健所とのやり取りも代行可能です。
さらに当事務所では、現場経験に基づいた実践的なアドバイスも提供。書類だけでなく「実際の営業スタイルに合った法的整備」まで対応できるため、机上の理論にとどまらない“本当に使える支援”を実現しています。
開業時の不安を確実に取り除き、安心して営業をスタートさせたい方は、ぜひ私たち行政書士にご相談ください。成功するガールズバー運営は、正しいスタートから始まります。
まとめ
ガールズバーの開業には、風営法や食品衛生法、都市計画法など多くの法律が関わります。見た目にはシンプルに思える業態でも、実際の営業内容・接客方法・構造が適切でなければ、知らぬ間に違法営業となる危険性があります。
実際に「知らなかった」「他の店もやっているから大丈夫だと思った」といった理由で摘発されるケースも少なくありません。開業前に正しい知識を持ち、確実な法令対応を行うことが、安定した運営と長期的な成功のカギとなります。
弊所は、事前診断から届出書類の作成、警察・保健所とのやり取りまで一貫してサポートいたします。特に、現場を知る行政書士だからこそ、机上の理論にとどまらない実務的な助言が可能です。