風俗営業許可1号とは?
キャバクラやホストクラブ、スナック、ラウンジなどで「接待」を伴う営業を行うには、風営法に基づく第1号許可が必要です。
ここでいう接待とは、お客様と会話をしたり、お酌をしたり、カラオケの相手をするような行為を指します。この風俗営業許可1号は、通常の飲食店営業許可とはまったく別物で、より厳しい基準と審査が設けられています。
具体的には、営業する場所の用途地域や近隣施設との距離、店舗の構造や内装の基準、そして経営者の身元や過去の経歴までが審査対象です。許可を取らずに営業を始めてしまうと、営業停止命令や罰金、場合によっては刑事罰の対象にもなりかねません。
許可取得に必要な3つの要件
風俗営業1号許可を取得するためには、法律で定められた「人的要件」「場所的要件」「構造的要件」の3つをクリアする必要があります。これらの条件を満たさなければ、いくら内装にお金をかけても、事業計画がしっかりしていても、許可は下りません。以下では、それぞれの要件について詳しく解説します。
人的要件(経営者・管理者の信用)
まず、申請者や店舗責任者(管理者)に関する条件です。信頼性が問われるため、過去の経歴や身分が重要になります。
- 成年であること
- 風営法違反歴・重大な前科がないこと
- 暴力団関係者でないこと
- 破産して復権していない者でないこと
これらに該当していると、許可を受けることはできません。法人で申請する場合は、代表者だけでなく役員全員が審査対象になります。開業を考えている方は、まず関係者全員がこの要件を満たしているかを確認しましょう。
場所的要件(地域・立地制限)
風俗営業は、どこでも自由に開業できるわけではありません。都市計画法によって用途地域が決められており、それによって営業可能なエリアが限定されています。また、営業場所の周囲にある公共施設との距離も関係してきます。
- 用途地域による営業可能エリアの制限(住居専用地域はNG)
- 学校・病院・保育所などの「保全対象施設」から一定距離が必要
- 各都道府県や市町村が定める条例に従う必要あり
例えば大阪市では、商業地域内でも保育所から100m以内にあると許可が下りないケースがあります。一方、東京都新宿区の歌舞伎町など一部地域では一定の緩和がされていることもあります。このように、地域によって大きく異なるため、事前に管轄の公安委員会や行政書士に確認することが重要です。
構造的要件(店内の仕様)
店舗の構造に関する規定も多岐にわたります。これは、店舗内での違法行為を防止し、利用者の安全を守るためのものです。
- 客室の広さが一定以上であること(例:和室9.5㎡、洋室16.5㎡以上)
- 店内が外から直接見えないような構造であること(すりガラスやカーテンなどで対応)
- 客室に施錠できるドアがないこと(ただし外部出入口は施錠可)
- 見通しを妨げる仕切りがないこと(100cmを超える棚・観葉植物などは禁止)
- 店内の照明が5ルクス未満にならないこと(過度に暗い演出はNG)
- 騒音や振動が近隣へ漏れないように防音設備があること
さらに、ポスターや内装についても過激な表現やわいせつな写真は禁止されており、設置物の内容まで審査対象となります。検査の際に指摘を受けやすい部分ですので、細部まで確認しましょう。
これらの構造的要件も、都道府県ごとに微妙に基準が異なるため、行政書士など専門家による事前確認が不可欠です。
申請から許可までの流れ
風俗営業許可1号を取得するためには、いくつかのステップを順を追って進める必要があります。ここでは、申請から許可取得までの流れを分かりやすくご紹介します。
物件選定と事前調査
まずは営業する店舗の物件選びです。風営法では、立地や用途地域に厳しい制限があり、許可が下りない場所もあります。また、近くに学校や病院などの「保全対象施設」がある場合もNGとなることがあります。契約前に、営業可能な場所かどうかを必ず確認しましょう。
書類と図面の作成
次に、警察署に提出するための書類や図面を作成します。必要な書類は以下の通りです:
- 営業許可申請書
- 営業の方法を記載した書類
- 店舗の平面図、面積計算図、周辺地図
- 管理者の履歴書・顔写真
- 誓約書(暴力団関係者ではない、破産していない等) これらの書類は、形式や内容に厳しいルールがあり、少しのミスでも差し戻されてしまうため、行政書士に依頼するのが安心です。
所轄警察署へ申請
書類が揃ったら、営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)へ申請を行います。通常は事前予約が必要です。受付後、警察による審査が始まり、55日程度の期間がかかります。
店舗立入検査
書類審査が終わると、警察による実地検査(立入検査)が行われます。店内の広さ、照明の明るさ、防音の有無、パーテーションの高さなどが細かくチェックされ、不備がなければ次のステップへ進めます。
許可証交付
立入検査で問題がなければ、警察署から連絡が入り、営業許可証が交付されます。許可証を受け取った後は、いよいよ正式に営業を開始することができます。
- 警察署から連絡あり。許可証を受け取り営業開始
飲食店営業許可も必要
キャバクラやラウンジは、飲食を提供するサービス業でもあるため、営業を開始するには「飲食店営業許可」も必要になります。これは保健所が管轄するもので、厨房設備や衛生面の基準を満たしていることが求められます。
飲食店営業許可がない状態では、たとえ風俗営業1号の申請をしても受理されない場合があります。したがって、風俗営業許可の申請を行う前に、必ず保健所での許可を取得しておくようにしましょう。
費用の目安
費用項目 | 金額の目安 |
警察への申請手数料 | 24,000円 |
保健所への申請手数料 | 16,000円 |
各種証明書・実費 | 約3,000〜10,000円 |
行政書士報酬(1号許可) | 165,000円〜(税込) |
※上記は大阪・東京を基準とした相場です。
よくあるミスとトラブル
- 申請後に立地NGが発覚 → 契約前に調査すべき
- 図面ミス・記載ミス → 警察から差し戻し
- 申請に時間がかかりオープンが遅延 → スケジュール管理必須
専門行政書士に依頼するメリット
風俗営業許可1号の申請は、単なる「書類提出」ではありません。法律・地域条例・構造基準など、多方面にわたる規制に正確に対応する必要があり、少しのミスや見落としが許可不交付につながることも珍しくありません。
行政書士に依頼する最大のメリットは、「最初から正しい道筋で進める」ことにあります。特に当事務所では、次のような実務的な強みを持っています。
- 許可が取れる物件かどうかを、契約前の段階で徹底調査。無駄な賃貸契約を避けられます。
- 許可取得に必要な図面作成や複雑な添付書類もすべて一括対応。
- 警察との折衝や補正対応も任せられるため、申請者が直接やり取りする負担が大幅軽減。
- 審査中に起こり得る懸念点や指摘事項への先回りした対応が可能。
また、当事務所の行政書士は、ナイトビジネスの現場経験も有しているため、単なる法的書類の処理だけでなく、開業後の運営面も見据えたアドバイスが可能です。「本当に通る書類」をつくる視点と、「現場に合うサポート」を両立できる点が、弊所の強みです。
まとめ
風俗営業許可1号は、キャバクラやホストクラブなど、接待を伴う飲食業を開業する際に避けて通れない重要な手続きです。場所や構造、申請者の条件など、クリアすべき要件が多く、申請の準備には時間と労力がかかります。
その一方で、しっかりと準備し正しく申請を行えば、許可取得は決して不可能なものではありません。専門家の力を借りることで、トラブルやミスを避け、スムーズな開業が実現できます。